腎臓は毛細血管からできている糸球体の集まりで、血液中の老廃物を除去するとともに、からだに必要な成分を残す役割をしています。この機能が少しずつ低下していく病気の総称が慢性腎臓病(CKD)です。人工透析の原因疾患の一位で、患者は全国に1300万人以上いると推計され、新たな「国民病」と言われています。慢性腎臓病と関連が深いのは循環器疾患と、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病です。
また、日本人の高齢者を対象にした疫学研究では歯周病の重症度と腎臓の機能低下が関わっていることが報告され、逆に歯周病が慢性腎臓病を悪化させる可能性が示されています。つまり、慢性腎臓病も糖尿病などと同じように歯周病と双方向に影響しあうのです。
慢性腎臓病が歯周病を悪化させる理由は、腎臓が産生するエリスロポエチンというホルモンです。エイリスロポエチンは赤血球を作る働きを促進しており、慢性腎臓病が進行するとこのホルモンが十分に産生されなくなりからだには貧血状態となります。
その結果、各組織の酸素や栄養不足から免疫力の低下が起こり、さまざまな歯周病やウイルスなどに感染しやすくなります。また、エリスロポエチンは骨を作るカルシウムの代謝にも深く関わっており、このホルモンが不足すると骨代謝がうまくいかなくなり、歯周病により減っている歯槽骨をさらに破壊させるリスクになってしまうのです。
一方、歯周病が慢性腎臓病を悪化させる可能性については、歯周病原菌や炎症性サイトカインが血管に侵入することが原因ではないかと指摘されています。血液に侵入したこれらの物質が腎臓の血管に行きつき、病気で傷害されている内皮細胞の悪化が進行しやすくなると考えられています。
また、慢性腎臓病の人は糖尿病を抱えている人が多いのですが、歯周病の悪化によって血液コントロールが不良になることも腎機能を低下させる原因になります。