再生治療について

はじめに

軽度の歯周病であれば、スケーリング、ルートプレーニング等による歯周基本治療によって改善されますが、歯医者さんを訪れる方の中には、歯周病が進行し、悪化されている方も少なくありません。
歯周基本治療を行っても歯周ポケットの深さが5ミリ以上ある場合には「フラップ手術」という外科的な治療が行われることがあります。これは、歯肉を切開して歯根を露出した状態でスケーリング、ルートプレーニングを行う治療法です。また、歯を支えている骨(歯槽骨)が溶けてしまって、歯がグラグラ動いている場合には、壊れてしまっている歯の周りの歯周組織、特に骨の部分(歯槽骨)を作り直す治療を行います。
再生治療




再生治療について

GBR(guided bone regeneration)

骨組織再生誘導法。骨を再生する治療。


GTR(guided tissue regeneration)

歯周組織再生誘導法。歯周組織を再生する治療。





歯周組織再生治療の適応症と禁忌症

適応症

①骨欠損:水平性の骨吸収ではない。

②根分岐部病変:著しい骨吸収がない。

③歯肉退縮:歯根の露出が著しくいない。


禁忌症

①歯周(歯槽骨)組織破壊が高度な状態

②手術部位を被覆する十分な歯肉、角化粘膜が得られない状態

③創傷治癒に悪影響を与える可能性のある他の治療を受けている

④重度喫煙者、プラークコントロールおよびコンプライアンス





歯周組織再生治療とは?

組織細胞工学(Tissue engineering triad)

       
機能喪失または機能不全となった歯周組織を再生する治療です。 「ティシュエンジニアリング」と言われている組織細胞工学に基づく再生治療が原理原則となります。この考えには、 3つの要素が必要となります。        
       
歯周組織再生治療        

1.細胞(幹細胞)

       
特定の細胞に分化する能力を持つ細胞。歯根膜細胞、骨芽細胞など。
(胚性幹細胞(ES細胞)、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)など)        

2.足場(スキャフォールド)

       
細胞が接着できる足場としての細胞外マトリックスのこと。
簡単に言いますと、細胞が成長できる空間のこと。遮断膜、骨移植剤など。
(リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト(HA)など)        
骨補填材
       
骨欠損部の再生による歯周組織の安定、歯の支持増強による機能性、審美性の確保を目的として行う治療です。
当院では、安全性の点から自家骨移植と人工骨移植(ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムなど)を行っており、適応症は、あらゆる形態の骨欠損部、根分岐部の骨欠損部に応用し、移植材を保持する骨壁数が多いほど良好な骨再生が期待できます。
骨補填材
       

3.シグナル、成長因子(増殖因子、サイトカイン)

       
特定の細胞の増殖や分化を促進するタンパク質。
細胞を成長させる栄養源と思ってもらうと分かりやすいです。
繊維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(Platelet-derived growth factor:PDGF)、骨誘導タンパク質(BMP)、多血小板血漿(Platelet-rich Plasma)、エムドゲイン(enamel matrix derivateive)、リグロスなど。        
エナメルマトリクスタンパク質(EMD),塩基性繊維芽細胞増殖因子(リグロス:FGF-2)
       
歯周病にて破壊された歯周組織を、もう一度再生することで、機能を回復させることを目的とした再生治療法の材料です。
(EMD):幼若ブタの歯胚より抽出・精製したEMDを適応することで、セメント質を誘導し、歯周組織の再生をはかる手術法です。
当院は、このエムドゲインの使用量で全国の歯科トップとなっており、多くの患者さんに治療をしております。
エナメルマトリクスタンパク質(EMD),塩基性繊維芽細胞増殖因子(リグロス:FGF-2)
       
エムドゲイン®ゲルについて
       
歯周病により失われた組織の再生を目的とした材料です。今現在日本で厚生労働省の認可が下りている歯周病に対しての再生治療材料は、スウェーデンのビオラ社で開発された「エムドゲイン®ゲル」だけです。1998年に日本に導入されて以来、日本歯周病学会でも多くの良好な臨床報告がされてきています。 私も導入当初から使用していますが、導入前までは保存不可能と思われていた症例に対しても良好な結果が得られています。
エムドゲイン®ゲルについて
       
     
歯の再生治療        
       
右側レントゲン写真の黒い部位分が、左側レントゲン写真では白くなっています。
これは、矢印部分が再生治療により骨が再生したことを示しています。実は矢印の歯は一度歯を抜いて、再生治療を行い再び元に戻すといった治療を行っています。        




       

当院で使用している再生治療用材料

②足場

オスフェリオン、サイトランスグラニュール、スポンゼル、コラテープ、サイトランスエラシールド、ボナークなど

③シグナル

エムドゲインゲル、リグロスなど


塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)
       
【商品名】 リグロス
・内皮/骨芽/線維芽細胞の増殖
・血管形成
・骨形成
塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)
       
エナメル基質タンパク(EMD)
       
【商品名】 エムドゲインゲル
・歯根膜/骨芽細胞の遊走・増殖
・無細胞セメント質形成
・治癒促進
エナメル基質タンパク(EMD)
       
骨移植剤(β-TCPなど)
       
【商品名】サイトランスグラニュール、オスフェリオン、ボナーク
・スペースの確保
・再生の足場
・骨伝導能
・長期残存
骨移植剤(β-TCPなど)
       
アテロコラーゲン(collagen)
       
【商品名】コラテープ、テルダーミス、スポンゼル、サイトランスエラシールド
・創傷治癒促進効果
・創傷被覆剤
・止血効果
アテロコラーゲン(collagen)
       





Er:YAGレーザーの効果

①歯周病菌の殺菌効果

②治癒促進効果

③炎症の抑制

④骨形成促進効果


       
歯周外科治療時の歯根面などに対するデブライドメントは、主にハンドスケーラーや超音波スケーラーなどの機械的な操作によるものでした。
しかし近年レーザーの歯周治療への応用が増加し、水への高い吸収性を示すエルビウム・ヤグ(Er:YAG)レーザーは、歯周外科治療時において、歯石除去を含む病的歯根面などのデブライドメントに用いられることが多くなりました。レーザー光は、歯石などに含まれる水分にエネルギーが吸収され、その気化に伴い内圧が亢進し、“微小爆発”によって歯石などの汚染物を蒸散させます。また、照射面の殺菌やエンドトキシンの分解・除去効果も期待できる。さらに、組織の再生効果も期待されます。
YAGレーザー
       





再生治療の流れ

再生治療の流れ1

       
再生治療の流れ1
再生治療の流れ1
       
       
1-1  著しい骨の吸収。(黒い部分は骨がなくなっている状態。骨に異常がなければ白く写る)
1-2  縁下歯石、骨吸収が認められる。
       

再生治療の流れ2

       
再生治療の流れ2
       
       
2  徹底的な歯石除去、不良肉芽の除去をおこなった。Er:YAGレーザーも使用して徹底的に細菌叢を除去する。
       

再生治療の流れ3

       
再生治療の流れ3
再生治療の流れ3
       
       
再生治療の流れ3
       
       
3-1  著しい骨の吸収(黒い部分は骨がなくなっている状態。骨に異常がなければ白く写る)
3-2  ②足場:炭酸カルシウム、自分自身の骨が出来るまでのスペース確保の材料。
3-3  ②足場:炭酸カルシウム、③シグナル:リグロス両方の材料を混合した状態。
       

再生治療の流れ4

       
再生治療の流れ4
再生治療の流れ4
       
       
4-1  骨欠損部に再生治療材料を充填する。
4-2  アテロコラーゲン:軟組織治癒促進と再生材料の流出防止。
       

再生治療の流れ5

       
再生治療の流れ5
再生治療の流れ5
       
       
5-1  歯周病による著しい骨吸収像。
5-2  歯周病による著しい骨吸収部の感染物質を除去した後、再生治療材料を充填。黒い部分が白くなっています。約1年位かけて自分自身の骨に置き換わっていきます。
       

再生治療の治療例

       
再生治療の治療例
再生治療の治療例
       
       
再生治療の治療例
       
       
初診時X-ray : 歯を支える骨が歯周病によってなくなった状態。
メンテナンス時X-ray : 歯周病の再発による骨吸収が再発したため再度再生治療を行なった。
再生治療後のX-ray : 再生治療を行なって約8ヶ月経過。自分自身の骨に置き換わってきています。
       





GBR(骨再生)の流れ

GBR(骨再生)の流れ1

       
GBR(骨再生)の流れ1
       
       
1  歯根破折により保存不可能な為、抜歯する事となった。

歯を抜くだけでは骨はできにくいので、GBR(骨再生)を抜歯と同時に行うようにした。

GBR(骨再生) を行うメリット
・骨ができる事で入れ歯の安定、維持が良くなる。
・骨があることでインプラント治療も可能になる。





       

GBR(骨再生)の流れ2

       
GBR(骨再生)の流れ2
GBR(骨再生)の流れ2
       
       
GBR(骨再生)の流れ2
       
       
2  歯を抜いて感染物を徹底的に除去した状態
       

GBR(骨再生)の流れ3

       
GBR(骨再生)の流れ3
GBR(骨再生)の流れ3
       
       
GBR(骨再生)の流れ3
       
       
3-1  徹底的な感染物除去をする事で出血のコントロールができた状態。
3-2  抜歯した空間に再生治療材料を充填。(リグロス、オスフェリオン、サイトランスグラニュールを混和)
3-3  最後に歯肉と接する部分には創傷被覆としてアテロコラーゲンを充填。(スポンゼル)
       
       
GBR(骨再生)の流れ3
GBR(骨再生)の流れ3
       
3-4,5 しっかりとした縫合が重要。
・充填した再生材料が保持出来る事。
・創傷治癒促進効果。
       





GBR処置後のインプラント

GBR処置後のインプラント1

       
再生治療の流れ4
再生治療の流れ4
       
       
1-1  歯根破折による骨吸収。歯を抜歯後にしっかり骨を再生する治療を行った。
1-2  GBR処置を行い、骨を再生してからインプラント処置を行うことにより安定した骨が出来ました。
       

GBR処置後のインプラント2

       
GBR処置後のインプラント2<
GBR処置後のインプラント2<
       
       
2-1  右上側切歯の歯根周囲全体に及ぶ骨吸収像。歯の周りの黒い像は骨がなくなっている状態。
2-2  骨(歯槽骨)がないとインプラント治療は出来ません。抜歯後すぐにGBR処置を行うことで、骨ができインプラント治療が可能になります。重要な処置です。
       





治療費の目安

健康保険の適用外なので自費診療となります。
1ブロックあたり、約250,000円~かかります。